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Lee-Byung-hun addicted

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第7話

『I'll dream of you again』 scene7

「・・・でここで何をしてるの。こんな時間に」
パトロール中の警察官は懐中電灯で代わる代わる二人の顔を照らした。
「あの・・・キャンプをしていました。」
「いい大人がこんなところでこんな時間に?家はどこ。」
「この近くです。」揺が答える。
「何でこの近くに家があるのにこんなところでキャンプしてんの。あれ、あなたもしや・・・とにかく社会的にも立場のあるいい大人がこんなところで誰かに見つかったらどうするつもりなんだ。全く・・・とにかく早く帰りなさい。家まで送ってあげるから」
声をかけた警官はビョンホンのことを知っているのかちらちらと顔を見るそぶりをしながらそう言った。
「あんまり軽率な行動は慎んだ方がいい。何をやっても有名人は騒がれるから。・・・ひとつ・・・ここにサインをくれないか。かみさんがあんたのファンなんだ・・・イ・ビョンホンさん」揺の家までパトカーで二人を送った年配の警官は帰り際少し恥ずかしそうにそういうと警察手帳を差し出した。
「えっ、ここにですか?」
「・・・・・・」


「・・で何?おまわりさんに現場押さえられて強制送還?おまけに名指しでサイン求められちゃったの?」そういうと幸太郎はゲラゲラと笑った。
「そうなの。イ・ビョンホンさんって言われた時のあなたの顔最高だったわ・・。貴重な体験だったわね。警察手帳にサイン求められるなんてこともまずないものね。」揺もそういってビョンホンの顔を見つめるとゲラゲラと笑った。
「笑い事じゃないよ。せめてもの救いは全裸じゃなかったことぐらいだ。」真顔でそういうビョンホンの言葉を聞き揺は飲んでいたコーヒーを噴出した。
「きたないなぁ・・・・」幸太郎とビョンホンが声を合わせて言った。
「だって、ビョンホンssiが変なこというからじゃない。全くもう・・」
揺は布巾で汚れたテーブルを拭きながら恥ずかしそうにそう言った。
そんな揺をちょっと上目遣いに愛おしそうに見つめるビョンホン。
そんなふたりを幸太郎は温かく見つめていた。

「さてと。じゃ、今日は久ちゃんのところにでも泊まりにいくかな。」そういうと幸太郎はおもむろにソファから立ち上がった。
「お父さん、いいわよそんな気を使わなくても」揺が言うと
「お前らはいいかもしれないけど独り身の俺が辛いんだよ。ま、どうぞごゆっくり。」
幸太郎はそういうと二人を見てニヤッと笑った。
「もう・・・じゃ、おじさまによろしくね。」ちょっとテレながら揺。
幸太郎は黙って頷くと手を振りながら玄関に向かった。
「お父さん・・」
玄関から出ようとしていた幸太郎を呼びとめ駆け寄ったビョンホンは彼に何か耳打ちをした。
「了解了解。じゃ、娘をよろしく」
幸太郎は彼にそうにこやかに答え玄関を後にした。
「もう、お父さんたら」そういいながらも揺はちょっと嬉しそうだった。
そんな揺を後ろから抱きしめるビョンホン。
「ビョンホンssi・・・」揺はそうつぶやくと彼の吸い付くようなキスを独り占めにした。
「二人きりになれたね・・」と彼。嬉しそうに頷く揺。

「・・・ごめん。忘れ物しちゃって・・・」
二人はその声を聞くまで全く気がつかなかった。いつからそこに立っていたのか。いつの間にか出かけたはずの幸太郎がリビングの入り口にすまなそうに薄ら笑いを浮かべ立っている。
慌てて離れる二人に
「どうぞどうぞ。気にしないで続けて・・・」彼はそういい残すとリビングを横切り書斎へ向かった。
彼が書斎へ去った後二人は顔を見合わせてゲラゲラと笑った。
「まいったな・・・」ビョンホンはそういうと困ったように額に手を当てた。



「しかし、君のお父さんは大物だね。僕が父親だったらああは言えないな。目の前で嫁入り前の娘が男と抱き合ってたらきっと不機嫌になる」
ビョンホンは腕枕した揺の髪をいたずらしながらそう言った。
「あなたは特別よ。お父さんもお母さんもあなたのこと大好きなんだから。私のことは「エビ」くらいに思ってるんじゃない。で・・あなたは「鯛」」そういうと揺はビョンホンの顔を愛おしそうに見つめた。
「どういう意味?」ビョンホンは怪訝そうに訊ねた。
「ん?日本のことわざよ。わずかな元手で大きな利益を得ることをそういうの。だから私は孝行娘なわけ。私に親孝行させてくれてありがとう。ビョンホンssi・・」
揺はちょっと笑いながらそういうとビョンホンの頬に感謝のキスをした。
「え・・君の感謝の気持ちはその程度なの?」意地悪そうに彼は彼女を見つめた。
「え・・・もっと感謝してほしいの?」
「うん。お父さんもお母さんもずっとずっと大切にするからさ。」
ビョンホンはそういうといそいそと揺の方へ向き直った。
「もう・・・しょうがないな・・」
恥ずかしそうに揺は答えるとすっくと生まれたままの姿で立ち上がった。
「揺・・・どうしたの?」驚いて声をかける彼。
「ん?お風呂に入るの。一緒に来る?」
そういい残し彼女はさっさと寝室を後にした。
ビョンホンは嬉しそうに彼女の後を追った。

「ここの窓から見える月は最高に綺麗なのよ。ほらこうやって覗くとかえでの葉っぱがちょうど窓のフレームの隅にかかって右上にお月様が見えるでしょ。この構図がいいのよね~」ひのきの香りのする湯船に浸かりながら指で枠を作って揺は窓の外を見つめている。
「どれどれ」ビョンホンはそういうと彼女が浸かる湯船にゆっくりと足を踏み入れた。
二人で入るにはちょっと狭い浴槽から湯が勢いよく流れ出す。
彼は彼女を抱きこむように湯の中に座り彼女が手で作ったフレームを覗き込んだ。
「ああ・・綺麗だね。わ~。今日はまん丸の満月だ・・・僕のお月様も満月かな?」
ビョンホンはそういうと後ろから揺をしっかりと抱きしめた。
「うんうん。大満足の満月よ。あ~何だか歌、歌いたくなっちゃった。」
揺は悪戯っぽく笑ってそういうときれいに音の響く浴室で彼の腕に抱かれながら歌を口ずさみ始めた。

Fly me to the moon
私を月へ連れてって
Let me sing among those stars
星々の間で歌わせて
Let me see what spring is like On Jupiter and Mars
木星や火星の春がどんな様子か私に見せて
In other words, hold my hand
つまりね・・・手をつないで
In other words, darling kiss me
つまりね・・・ねぇキスして
Fill my heart with song
歌が私の心を満たす
Let me sing for ever more
ずっと、もっと歌わせて
You are all I long for
あなただけが私にとって何ものにも代えられない、
All I worship and adore
あなただけが大切で尊いもの
In other words, please be true
つまり、「真実(ほんとう)にしてほしい」ってこと
In other words, I love you
言い換えると・・・「愛しています」

歌い終わった揺はちょっと恥ずかしそうに湯船のお湯をそっと両手でかき混ぜた。
お湯の音がピチャピチャと浴室に響く・・・。
「揺・・・」ビョンホンが声をかけた。
「ん?」揺はビョンホンに背中を向けたまま答えた。
「月へ・・・・・連れてってあげる。」
そういうと彼は彼女の肩越しにとろけるように情熱的なキスをした。答える揺。
お湯はまるで二人の愛のように浴槽から激しく溢れ出す。
温かいお湯に包まれながら愛し合う二人を見ていたのは窓から覗く月だけだった。



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